今回は、「いくらかかっていると思っているんだ」という言葉がどのような影響を及ぼすか考えていきたいと思います。
中学受験関連のSNSを見ていると、悲痛な投稿もチラホラ目に留まります。
特に受験本番が差し迫ってくる10月以降にもなると、悲痛な叫び系の投稿は増えるような気がします。
そのような「悲痛な叫び」系の投稿をしたくなる気持ちは十分にわかります。
☑ ずっとYoutubeばかりで勉強しないわが子
☑ 偏差値が低くても頑張ろうとしないわが子
☑ 志望校に到底受かりそうにないのにダラダラしているわが子
☑ やる気がないくせに塾をやめないわが子
上記のように、わが子にネガティブな感情を抱くことは親なら必ず一度はあるでしょう。
SNSでつぶやく程度でしたら、大きな問題は起こらないかもしれませんが、お子さんに直接言ってしまうと破綻してしまいかねません。
特に、
☑ いくらかかっていると思っているんだ!
☑ 毎月大金を払っているんだぞ!
☑ おまえのために家族みんな我慢しているんだ!
☑ 兄弟姉妹、家族全員を犠牲にしているんだぞ!
と言ってしまうと、「天空の城ラピュタ」でいう「バルス」に近い威力があります。
これらの暴言は、子どもにとって心の大きな傷になってしまいかねません。
では、
これらの言葉がどのように影響してしまうのか
また、
これらの言葉を言わないようにするためにどのようにすればよいのか
について、精神科医として説明していきます。
子どもは基本的にやりたいとは思っていない
子どもは「中学受験なんてやりたくない」と思っています。
親御さんは、この事実を改めて認識する必要があります。
よくある反論パターンは、
子どもから中学受験をしたいと言ったんだ!
とか
お友達が中学受験していて私もやりたいというから仕方なく通わせてるんだ!
などです。
まぁ、表面上はそうかもしれませんが、根本的には違います。
親御さんは意図せずに、「中学受験をしてほしい」という願望をお子さんに伝えているのです。
〇〇ちゃんは、中学受験を目指して頑張って勉強してるんだってね。
とか、
□□君は、頭いいみたいね。塾で頑張ってるんだってね。
という発言や態度をお子さんの前で無意識にしていて、
お前も勉強して中学受験をしてほしい
という感情がお子さんに伝わっていると考えるべきでしょう。
子供さんは、
親は勉強を頑張ると喜んでくれる
という気持ちで、
私も受験をしてみたい
と、発言していると理解すべきです。
この「理解」ができないと、衝突を繰り返してしまうでしょう。
そして、知らず知らずのうちに、高望みしてしまっています。
過度の期待をしていないか?
お子さんに過度の期待をしていないでしょうか?
〇〇ちゃんは、頭のいい△△中学を目指しているんだって。あなたもがんばったら?
とか
□□くんは、偏差値上がってきてるみたいね。クラス上がったんだってね。あんたはどうなの?
という発言で、お子さんを追い込んでないでしょうか?
夫婦だけでの会話のつもりでも、こっそり聞こえている可能性もあります。
人間は、欲望が止まりません。
振り返れば、次のように「欲望」「期待」が大きく膨らんでないでしょうか?
生まれてくるまでは、「五体満足であれば、それだけでいい」
生まれてからは、「勉強できなくても、健康ですくすくと育ってくれさえすればいい」
育ってくると、「中の中で十分です」
大きくなってくると、「もっと上を目指しなさい!!!」
というような感じで、人間の欲は際限なく、ハードルをどんどん上げていきます。
ここで、ちょっと考えてみてください。
「そもそも私自身の子供なんだよ」ということです。
自分ができなかったことを子供にリベンジさせるのは賢明ではありません。
お子さんは親のコピーロボットではないので、親の欲求を満たせるようにプログラムされてるわけではないのです。
お子さんに過度の期待を寄せすぎると、失敗した場合、さも親自身が否定されたような感覚になるかもしれません。
それが怒りのトリガーになってしまいます。
残念ながら、勉強の能力などは遺伝的な要素も絡んできます。
トンビが鷹を産むケースもときどきは見受けられますが、いろいろと客観視して理想と現実をしっかり見極めていくことも必要です。
客観視するには、塾の講師などに相談するとよいでしょう。
オブラートに包みながら、客観的な意見を述べてくれます。
また、過度な期待は、言わなくてもお子さんには十分に伝わっています。その期待感でテストで十分な力が発揮できないことさえあり得ます。
人間は欲にまみれているので、知らず知らずのうちに過度の期待を抱きがちです。
何事も、求めすぎる、過度の期待をするというのは、破綻を招く考え方なので注意したいですね。
過度の期待は禁物。
客観視して理想と現実のギャップを知る。
過度の期待をしすぎなくなると、自然と怒りのボルテージも下がってきます。
いくらかかっていると思っているんだ!
特によくないのは、過度の期待から出てしまう「この発言」です。
どれだけお金かかってると思ってるの!
は、絶対に禁句です。
はっきり言って、中学受験はほぼ100%親の主導です。
子供からしたら、やりたくないのにやらされているので、お金かかってるかどうかは知ったことではありません。
ただ、お子さんによっては、真剣に受け止めてしまい、
「僕が悪い点数をとってしまうと、今までかかったお金が無駄になってしまう」
と思いつめ、テストで十分なパフォーマンスが出なくなります。
このテストは100万円の費用がかかっているとなると、ビビって問題の選択肢を選べなくなってしまいます。
もし親御さんが、100万円もかかっている試験だと思うと、十分なパフォーマンスを出せるでしょうか?
言わずもがな、お子さんは「多額の費用がかかっている」ということを知っています。
ただでさえ、多額の費用がかかっているとわかっているのに、追い打ちをかけるように「いくらかかっていると思っているんだ!」と言われてしまうと、萎縮し十分なパフォーマンスが出せず負のスパイラルに陥ってしまいます。
負のスパイラルに陥ると大変です。「自己肯定感」は喪失し、今後の人生にも大きな悪影響を及ぼしかねません。
最悪の場合、精神的なダメージを与えて、精神的な不調をきたしてしまいます。
☑ チック症
☑ 不登校
☑ 脱毛
最終的に「引きこもり」まで陥ってしまう例もあります。
こういう事態に陥ってしまうと、ゼロに戻るどころか、「マイナス」にまで落ちてしまいます。
多額の費用をかけてきたのに、親の心無い一言が原因で水の泡になるどころか、マイナス、取り戻せないほどの落ち込みに追いやってしまう可能性を十分に頭に入れておく必要があります。
追い込まれると、やる気を失い、あるいは、どうしていいのかわからず、ダラダラと時間を過ごすような行為しかできなくなります。
お子さん自身は、やらなきゃいけないとは思っていても、そもそもどうやって打開していくかがわからないのです。
ここが、親の腕の見せ所です。
では、
どのようにして建設的に導いていけばいいのか?
を考えていきましょう。
怒らずに建設的な方向に進める方法
では、どうやって怒らずに建設的な方向に進めることができるでしょうか?
答えは、
一緒に改善策を考えること
が一番です。
具体的に改善策は、
✅ 間違った問題を一緒になって考えてあげる。そばで見てあげるだけでもいい。
✅ 親自身もいつも点数が良かったわけではないと説明し、次は頑張ろうと前向きに話す。
✅ 次は間違えないように、間違えた問題の類似問題を探してあげる。
✅ 繰り返し同じような問題を間違えているのならば、勉強や復習の過程に何か問題があるはずなので、塾の講師に進め方にどこか間違いがないか具体的に相談する。
怒るという行為は、時に必要な行為であることもありますが、基本的に突き放すだけで進歩がありません。
むしろ、マイナスにしか働かないことがあります。
怒るという行為は、一緒に改善するということの放棄を意味します。
怒るという行為は、「一緒になって改善する」ということを放棄する「怠慢の現れ」とも言えます。
やはり「一緒になって考える」という行動は、「怒る」という行動よりかなりパワーを使いますから、「怒る」ことで親自身もすべてを放棄したくなる気持ちは十分わかります。
ただ、怒ると次への行動が遅れますし、怒ることでさらに溝が広がり、いつの間にか修復不可能なところまで進展しかねません。
怒られる方からすれば、立場が弱い分、「怒られる=放棄された」と感じ、虚無感や絶望感を感じ、萎縮しさらにパフォーマンスが落ちかねません。
怒る気持ちをグッと抑えて、
これ間違ったのか。じゃあ、一緒に考えよう。
とか
あぁ、これって前も似たようなやつ出てなかった?そばで見といてあげるからもう一度解いてみよう。
とか
一緒になって問題に取り組む姿勢が大事です。
一緒になって取り組むことで新たに気づかされることもよくあります。
えっ!?こんなにも難しい問題を解いているんだ…
とか、
こんな量の宿題をやるなんて大変すぎる
など、改めて「中学受験って大変である」ということに気づくでしょう。
一緒になって考えることで、すごく大変なことをしていると認識することはお子さんを理解するという意味で大事です。
そのように一緒に頑張っても怒りたくなることはあるでしょう。
☑ 何度も同じ間違いをする
☑ いつまでたってもやり始めない
などなど親御さんが怒ってしまう気持ちも理解できます。
では、
怒ってしまったらどうしたらよいでしょうか?
一時的に怒っても引きずらない
たとえ怒ってしまったとしても、ひきずらないことが大事です。
これも当たり前ですが、難しいことの一つで、
怒っても、すぐにその場で解決し後にひきずらない
ことが大事です。
やはりどうしても怒ってしまうシーンはあります。
そこでネチネチ引きずってはいけません。
怒ってしまっても、すぐにその場で解決しましょう。
「はい、おしまい! とりあえず、おやつにしよう。それから間違い直ししよう。」
とか
「よし、おっけ! 次は頑張ろうね。 でも、何度も出ている問題は復習して次は正解しようね」
とか
その場で解決してしまいましょう。
引きずると時間の無駄ですし、トラウマ的な感覚が残り、次のテストでも失敗してしまう可能性が高いです。
怒ってしまったとしてもひきずらない。
怒ってしまったとしてもひきずらない。
その場で解決して、次に進むことが大事。
まとめ
今回は、「いくらかかっていると思っているんだ」という言葉がどのような影響を及ぼすかに解説しました。
長くて短い受験戦争の中で、親子で対立することはどのご家庭でもあり得ることです。
ただ、大きく衝突してしまうと、時間のロス、精神の消耗、最悪の場合、崩壊の可能性が出てきます。
おそらく、衝突したとしても、どうせ受験するのでしょう。
であれば、前向きに進めていくことが大事です。
✅ 子どもは「やらされている」と思っている→子どもは「やりたくてやっていない」ことを理解すべき。親のために頑張っている可能性が高いことも認識するべき。
✅ 過度の期待をしない→過度に期待しすぎるとお互いに苦しくなる。客観的に理想と現実を把握しておく必要がある。
✅ 怒ってしまってもひきづらない→怒ってしまったとしても、すぐにその場で解決し、建設的に次に進めることが大事。
中でも、
どれだけお金かかってると思ってるの!
は、絶対に禁句です。
「言うは易し、行うは難し」で私自身、100%このように実践できているわけではないですが、気持ちがあるだけでもだいぶ変わってきます。
これは私個人の意見で、誰かを参考にしたわけではないので、反対意見などあると思います。
ただ、こんな意見もあるんだなというような位置づけで参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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